移動式クレーンの遠隔操作システム「CRANET」を開発-遠方設置のコックピットから移動式クレーンの操作を実現-
2024年9月19日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、タダノ(社長:氏家俊明)、アルモ(社長:河田宣人)と共同で、移動式クレーンの遠隔操作システム「CRANET(クラネット)」を開発しました。高松市に設置した専用コックピットから、約70km離れた徳島市の建設現場に設置した移動式クレーンを遠隔操作し、材料の移動・積み込み・積み下ろし作業等を支障なく実施できることを確認しました。
時間外労働時間の上限規制や技能労働者の減少などに起因して、建設業界の働き方改革は喫緊の課題となっています。クレーンのオペレータは、毎朝一度事業所に出勤した後、建設現場に移動し、クレーンの運転席で1日を過ごします。このため、移動にかかる時間の短縮、狭い運転席での作業による身体的負担の軽減と環境改善などが求められています。
「CRANET」は、事業所オフィスに設置したコックピットから遠方の建設現場にある移動式クレーンを遠隔操作するシステムです。オペレータは建設現場に出向く必要がなく、事業所内で身体に負担をかけず快適に作業を行うことができます。また、事業所内に複数のコックピットを設置すれば、多数の若手オペレータに対して熟練オペレータ1名による指導教育が可能になります。建設技術の次世代への伝承や建設業界の魅力向上にも寄与します。
技術の概要
作業状況に応じて建設現場内を移動するクレーンに対応するため、通信システムは光ファイバー等の有線回線を用いない完全無線システムを採用しており、クレーン操作に支障のない高速かつ安定した通信環境を確保できることを確認しました。データ通信規格は最新の移動式クレーンの情報信号に用いられるCAN※に対応しています。
コックピットは移動式クレーンの運転席を忠実に再現しています。運転席周りの要所に設置した複数のカメラ映像を専用モニタにリアルタイム表示することで、揚重物を目視確認しながら操作する運転席と遜色のない作業環境を実現しました。また、モニタには動作信号および異常信号を常に表示します。
- ※ CAN(Controller Area Network):ドイツBosch社開発のシリアル通信規格。現在ほぼすべての自動車に採用されている他、工場の自動化など幅広い分野で活用されている
今後の展開
諸官庁と協議しながら2024年12月まで作業所での試験適用を行い、2025年度中の本格的な運用開始を目指します。その後は本システムの普及を進めるとともに、移動式クレーンのみならず様々な工事用機械へと適用範囲を広げていきます。これらの活動を通して、建設業界全体のさらなる生産性向上や魅力向上を目指します。
補足
当社はタワークレーンの遠隔操作技術TawaRemo®を開発し、多数のプロジェクトに適用しています。
タワークレーンでは、設置された場所から移動することがないため通信システムの一部に光ファイバーなどの有線回線を利用できる点、および、オペレータは、運転席からの目視確認によらずモニタ映像を視認しながら操作する点、が本システムと異なっています。