減築と増築で既存躯体を活用した「大阪避雷針工業神戸営業所」が竣工~サーキュラーデザインビルド®初のプロジェクト~

2024年10月10日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)が掲げる「サーキュラーデザインビルド(※)」のコンセプトを体現した初のプロジェクト「大阪避雷針工業神戸営業所」(兵庫県神戸市)が、このたび竣工しました。
減築と増築を同時に行うことで既存躯体を活用した魅力的な空間づくりに加え、積極的な木材利用やCO2排出量の少ない電炉鋼材、ECMコンクリート®の採用などにより、同規模の建物を新築した場合と比較して、建設時のCO2排出量を約70%削減しました。今回の改修で実施した外装の高断熱化などの省エネ改修により、外皮性能は当社評価で、BEI=0.40、CASBEEはSランク相当となりました。

建物外観(着手前)
建物外観(着手前)
建物外観(竣工時)
建物外観(竣工時)
断面パース(着手前) 
断面パース(着手前) 
断面パース(竣工時)
断面パース(竣工時)
  • サーキュラーエコノミーを実現するために当社が提唱している、建築物の設計及び施工段階でリユース・リサイクル建材の選択や、解体を考慮した設計手法検討などへとつなげる考え方と実践に関する取り組みを称するもの。

プロジェクトの背景

循環型社会の実現のためには、建築の長寿命化が欠かせない命題となっています。
当初、「大阪避雷針工業神戸営業所」では新築による建て替えが計画されました。プロジェクト開始後、1989年に建てられた既存建物を調査した結果、構造体は健全で、外装タイルの劣化も軽微でした。そのため建物を解体して廃棄物にするのではなく、減築と増築を同時に行うことで、建物を次世代に遺すことになりました。

減築・増築のポイント~採用した技術

築35年の既存躯体を調査したところ、今後70年以上の耐用年数が見込めました。
この躯体を活かし、使い勝手上、必要な部分には増築を、改修後に使用しない部分には減築を行いました。増築部に対する減築部の位置と重量を緻密に調整することで、既存躯体への不要な耐震補強や新規の基礎工事を行わずに増築しています。
増築部の構造部材には、高炉スラグ微粉末を含んだECMコンクリート®やスクラップ材を再利用した電炉鋼材、木材を無駄なく利用できるLVL (単層積層板)など、環境に配慮した構造材を選定するとともに、将来取り外し可能な取付方法を用いることで、将来の補修交換、解体にも配慮しています。また、新築する場合と比べて工期短縮に加え、解体時の騒音・振動を抑えることで周辺地域への影響も低減できました。

建物内観

資源循環の推進

敷地からはみ出して、伐採される予定だったクスノキは、神戸で木材有効活用事業に取り組むSHARE WOODS(代表:山崎正夫)と協業して、テーブルや手すりに加工し、その際に発生したおがくずも3Dプリンタ―を使用して植栽プランターに再生しました。改修前に使用していた照明器具・家具もリメイクして再利用しました。搬送時に生じるCO2の削減を考慮し、これらの加工、リメイクは近隣の工場で行いました。
今後、建築主が自ら修理・改造できるように、構造材のLVLや内外装仕上材などの新設部材は、将来取り外しやすいようにボルトやビスを露出させて取り付けています。

資源循環の推進

建築主 大阪避雷針工業株式会社
(代表取締役:山下充周)
建設地 神戸市兵庫区
敷地面積 660.87㎡
建築面積 297.14㎡(改修前:235.75㎡)
延床面積 471.59㎡(改修前:857.86㎡)
階数 地上2階(改修前:地上4階)
構造 既存:鉄筋コンクリート造
増築:鉄骨造+木造

今後の展開(展望)

当社は、【つくる】廃棄物を生み出さないようにつくる、【つかう】建築と建材を使い続ける、【つなぐ】まち・山の資源を循環させ、次世代につなぐ、の3つの方策からなる「サーキュラーデザインビルド」を今後も展開し循環型社会の実現を推進していきます。

つなぐ減築 ひらく増築 大阪避雷針工業神戸営業所