緑地の樹木配置を最適化するシミュレーション技術「Optree」を開発-朝日生命国立社宅計画〈あさひの杜国立〉に初適用-
2025年1月22日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、建物外構の環境性能を向上させる新たな技術として、樹木の種類や配置を最適化することにより、敷地内の緑地に良好な暑熱・風環境や緑豊かな景観を効率的にデザインするシミュレーション技術「Optree(オプツリー)」を開発し、「朝日生命国立社宅計画〈あさひの杜国立〉」に初適用しました。
樹木には屋外の暑熱環境・強風の緩和、景観の改善など、環境性能を高める重要な効果があり、適切な配置計画によるランドスケープデザイン※1が快適な空間作りの鍵となります。
これまでは、設計者が考えた数個の緑地デザイン案に対して環境シミュレーション(温度、風、日照などの環境状態を予測する技術)を行い、その中から最適案を選ぶため、検討できる範囲が限られていました。
今回開発したOptreeは、環境シミュレーションと最適化技術を組み合わせることで、敷地形状やコストなどのさまざまな制約条件のもと、環境性能の優れた案を効率的に見つけ出すことができるシミュレーション技術です。緑地のデザインでは、木々の配置パターンだけでも膨大な組み合わせが考えられますが、この技術では環境性能の良い案を優先的に評価していくため、全体の1%未満の検討数で最適な案を導き出すことができます。
これにより、従来の設計手法と比べて100倍の速度でシミュレーションし、膨大なデータの中から最適解を精緻に分析することで、お客様の求める環境性能を実現する理想的なランドスケープを創造します。
当社では、2012年より「生物多様性活動指針」のもと、人と自然が融合する自然共生社会の実現に向けた活動を継続しています。
今後は、本技術を様々なプロジェクトに適用して緑地環境の改善を図るとともに、新技術の開発等、生物多様性の保全・回復に寄与する「ネイチャーポジティブ」な取り組みを進めることにより、自然共生社会の実現に貢献します。
- ※1ランドスケープデザイン:自然が持つ多様な機能を活かした機能的で快適な空間のデザイン
「朝日生命国立社宅計画〈あさひの杜国立〉」での事例
本技術を初適用した「朝日生命国立社宅計画」(東京都国立市、2024年11月竣工)では、緑豊かな環境づくりと共に、居住者用菜園の日照確保、植栽コストの低減が求められました。Optreeを用いて1000本を超える樹木の配置パターンを約500ケース検討した結果、最適化を行わない場合と比較して、緑視率※215%増、菜園の日射量7%増、植栽コスト2.2%減を同時に達成しました。
ランドスケープ設計者が検討を行う従来の方法と比べて、約100倍の速度で検討することにより、樹木配置の膨大な組み合わせの中から最適解を10日間という短期間で効率的に導き出すことができました。
- ※2緑視率:視界に含まれる緑の割合
技術の概要
Optreeは、以下の3つのステップを繰り返して最適な樹木配置を見つけ出します。
- ①樹木配置モデル生成:木の大きさや植える場所を設定して3Dモデルを生成
- ②環境シミュレーション:温熱・風・景観などへの効果をコンピューターで計算
- ③最適化アルゴリズム※3:良い結果が出たパターンをもとに、「最適化アルゴリズム」を用いて樹木配置を効率的に改良(①にもどる)
初期モデルとなる樹木配置を設定した後、コンピューターが自動的にこのプロセスを繰り返すことで、環境性能が最適な樹木配置を効率的に見つけ出します。
- ※3最適化アルゴリズム:より良い解を効率的に探し出すための計算方法