量子コンピュータを用いた教育施設整備計画の最適化技術を開発カリキュラム案のシミュレーションを基に、施設にとって最適な新築・改修案を提案
2025年2月20日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、大学や高校、専門学校などの教育施設において、量子コンピュータを用いて複数のカリキュラム実施案(授業と教室の最適な組み合わせ案)を算出し、その結果を基に校舎の新築や改修といった教育施設整備計画の最適案を作成する技術を開発しました。量子コンピュータ(量子アニーリング技術※1)を用いて様々なカリキュラム実施案の比較検討を短時間で行うことにより、計画初期段階から教育施設整備計画案を効率的に検討できるとともに、建築主の要望を的確に反映した計画を立案することが可能となりました。
- ※1量子アニーリング技術:量子コンピュータの計算方式の一つ。多数の組み合わせの中から、高速で最適な組み合わせを探し出すことに特化した計算技術。
教育施設において教室などの稼働率を上げて経営を効率化するには、カリキュラム実施案に合わせた建物の最適な施設整備計画が必要です。教育施設のカリキュラム実施案は、施設構成、教員数、学生数など複数の要因について考慮する必要があるため、1学期を通して500以上の授業が行われるような大規模大学の場合、一つの実施案を作成するのに数か月の期間が必要です。
今回開発した技術は、カリキュラム実施上の制約の確認・シミュレーションに必要なデータの準備・プログラムの準備等の整理には、従来の方法と同等の時間を要しますが、準備が整えば、カリキュラム案を1案あたり10時間程度で作成(シミュレーション)することが可能となります。従って、施設構成などの条件を変更した複数のカリキュラム実施案を、短時間でシミュレーションすることができます。
これにより、シミュレーションで得られた複数のカリキュラム実施案を評価し、その結果を基に最適な施設整備案を提案します。
当社は今後、本技術を通じ、個別の施設だけではなくキャンパス全体の運用を視野に入れ、整備計画の立案における効率性と精度の高い提案を行います。
技術の概要
本技術では、教育施設のご協力のもと、以下の手順で最適な教育施設整備計画の立案をします。
- 1.教育施設の現状やカリキュラム実施上の制約を確認する
-
2.教育施設より以下のデータを入手する
- ・講義可能な時間帯などの教員の情報
- ・授業名、対象学部等の授業計画の情報
- ・教室数や定員などの施設の情報
- 3.当社にて教室数や定員についての施設構成案を考案する
- 4.教育施設より入手したデータ・当社で設定した施設構成案データを整理し、プログラムで読み取れる形式に変換する
- 5.教育施設固有の制約に対応するように、最適な施設構成案を算出するプログラムを修正・テストする
- 6.プログラムを実行して、最適な施設構成案を算出する
- 7.算出した結果を教育施設に確認していただき、フィードバックを受けてプログラムを修正・再実行する
- 8.最終的に得られた施設構成案をもとに施設整備計画を立案する

施設構成案の選択・提示の3つの観点
複数の施設構成案の条件で算出したカリキュラム実施案を以下の3つの観点から評価し、最適な施設構成案を選択します。
- ・カリキュラムとして破綻がないこと (例:2つ以上の必修授業を同じ日時で開催しないこと)
- ・カリキュラムとして望ましい要件をできるだけ満たすこと (例:授業間の教員や学生の移動が減ること)
- ・教育施設の稼働率が高いこと (例:教室の稼働率が高いこと)