大阪・関西万博会場の約4.4倍の面積の森林吸収量に相当するCO2削減を実施様々なCO2削減技術をPW(パビリオンワールド)西工区諸施設23件で推進
2025年4月10日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:佐々木正人)は、実施設計・施工を担当した2025年日本国際博覧会(以下大阪・関西万博)のPW西工区(敷地面積約20.4ha)の諸施設23件において、「サーキュラーデザインビルド®」※1をコンセプトに従来のスクラップ&ビルドから「つくる」・「つかう」・「つなぐ」をキーワードにリユース・リサイクル・アップサイクルなど、資源投入量と廃棄物を削減する取組みを推進し、大幅なCO2削減を実施しました。
- ※1サーキュラーエコノミーを実現するために当社が提唱している、建築物の設計及び施工段階でリユース・リサイクル建材の選択や、解体を考慮した設計手法検討などへとつなげる考え方と実践に関する取り組みを称するもの。
持続可能な大阪・関西万博にむけた方針※2に掲げる大きな目標のひとつに「Planet(生態系、環境):国際的合意(パリ協定、大阪ブルー・オーシャン・ビジョン等)の実現に寄与する会場整備・運営を目指す」が掲げられ、目指すべき方向として3Rの積極的な活用が求められています。これらの方針を基に実施設計者・施工者として所要の性能や品質を確保しながら、大阪・関西万博の会期が半年と短期間であることを踏まえ、資源循環と脱炭素に対し積極的に貢献する施設を目指して実施設計・施工を進めました。
- ※2公益社団法人2025年日本国際博覧会協会

具体的には、以下の3つの取り組みを行っています。
- ①地上部建屋におけるリユース資材の採用
- ②CO2排出量低減材料の採用
- ③エネルギー・資源消費を抑える計画
これらの取り組みにより、アップフロントカーボン(以下UC)※3を6,020.8ton-CO2削減しました。これは684.2haの森林が1年間にCO2を吸収する能力に相当し※4、大阪・関西万博の会場面積155haの約4.4倍の森林面積となります。

PW ⻄⼯区におけるUC 削減量の内訳
- ※3アップフロントカーボン(以下UC)
これまでの建設業界は建物使用段階のCO2排出量(=オペレーショナルカーボン)を削減することに注力してきたが、2050年カーボンニュートラルの実現に向け資材製造・施工・解体段階を含めたホールライフカーボン(図1)の削減に向けた議論が急速に進んでいる。図2に示すように国際エネルギー機関(International Energy Agency, IEA)によると全産業のうち建設分野由来のCO2発生量は37%を占め、その内約30%がUCを含むエンボディドカーボンである。大阪・関西万博は恒久的な建物と比べ建物寿命が短く、3R・脱炭素技術によるオペレーショナルカーボンの差異が出にくいことからUCに着目して算出している。


- ※4森林のCO2吸収量
林野庁の試算によると、スギの36~40年生の人工林が1年間に吸収するCO2の量は、1ヘクタールに1,000本の立木があると仮定した場合、約8.8トンと推定されている。
取組① 上部建屋におけるリユース資材の採用
6か月間の会期後の解体を考慮して、大和リース(社長:北 哲弥)とともに、総床面積の約73%をプレファブ工法によるリユース資材にて計画しました。上部躯体、外壁、屋根、建具について、リユース可能なプレファブ部材を採用し、従来規格の1.8mモジュールを用いて実施設計を調整することで、適用範囲を可能な限り増やす工夫を試み、多くの部材をリユース可能にしました。また従来のモジュールに加えて、パビリオン展示に求められる大きな無柱空間を実現する新たなモジュールを開発、加えてプレファブ部材を利用して、外壁にモジュール規格外のサイディング材を取付けられるディテールを考案し、フレキシブルに外装を選択できる自由度を確保しました。

取組② CO2排出量低減材料の採用
EXPOメッセ棟の基礎の一部にNEDO※5のグリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクトの一環として開発した「CUCO®-建築用プレキャスト部材」を採用しました。CUCO®-建築用プレキャスト部材は、① ECM(Energy・CO2 Minimum)セメントによるCO2削減技術 ② 再生微粉・再生骨材にCO2を固定化する技術(CCU材料)③ 特殊混和材LEAFをセメントに混合して硬化後にCO2を吸収する技術の3つで構成されています。
また、一般的に用いられる材料と比較し、資材製造過程や施工過程で発生するCO2が少ない低炭素型材料としてダンボールダクト・アルミケーブル・アルミ冷媒配管・水道用高性能ポリエチレン管を積極的に採用しました。これらは共通して軽量化や簡易な施工方法により、施工段階の省人化・省力化による脱炭素にも貢献できます。更にダンボールダクトは折り畳んだ状態で運搬するため、トラックの運搬回数を減らし資材運搬に係る脱炭素効果も期待される製品です。
- ※5NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
取組③ エネルギー・資源消費を抑える計画
夢洲の埋め立て地盤の沈下量などの特性を把握し、工事期間を含めた1~2年程度の建物使用期間中の沈下傾向を把握した上で、周辺地盤との沈下差を許容した「空隙を設けない浮き基礎」をほぼ全ての建物で採用しました。コンクリートや鉄筋等の資源及び掘削土量を最小限に押さえると共に、建物と周辺地盤との間には沈下差に追随できるしくみを採用することで、沈下が生じた場合でも支障なく建物が使用可能な工夫を行っています。
