資源循環

Ⅰ.サーキュラーエコノミー

いままでの経済は、モノをつくり、使い、最終的に廃棄するリニアエコノミー(一方通行型モデル)と呼ばれるものが中心です。 そして環境への取組みが社会的に必要になり、廃棄物とされていたものを資源として再活用してモノをつくり・利用することを3 R活動として進めてきました。
これからは、廃棄物の排出を前提としているリニアエコノミーと異なり、最初からできるだけ少ない資源でモノをつくり、その役 割が終わっても廃棄が出ない設計やデザインが実装されているサーキュラーエコノミーの実践が求めらます。 竹中工務店では、このサーキュラーエコノミーの考えにもとづき、新しい社会と建築のあり方を追求していきます。

リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ
リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ

1.これまでの当社の取組み

これまでの当社の取組み

  1. 作業所から発生する産業廃棄物のリサイクル率(2022年) 96.3%
  2. 電子マニフェストの利用率(2022年) 99.5%
  3. 3R功労者等表彰での受賞件数 国土交通(建設)大臣賞:20件、3R協議会会長賞:73件

サーキュラーエコノミーを実現するためには新たな技術開発、サープライチェーンの変革などが必要です。竹中工務店は2030年に廃棄物50%削減、2050年に100%削減を目標に活動を推進していきます。

2.トピックス サーキュラーエコノミーに関する車座対話に参加しました

参加者集合写真
参加者集合写真

2023年10月11日に、首相官邸で開催されたサーキュラーエコノミーに関する車座対話に、社長の佐々木正人が参加しました。今回の車座対話は、資源循環に取り組む有識者の意見交換の場として設けられたもので、佐々木社長は「建築分野の資源循環」について話をしました。

Ⅱ.竹中工務店が提唱するサーキュラーデザインビルド®

当社は、サーキュラーエコノミーを実現するために「サーキュラーデザインビルド®」というコンセプトを紡ぎだしました。従来のスクラップ&ビルドから「つくる」・「つかう」・「つなぐ」をキーワードにリユース・リサイクル・アップサイクルなど、廃棄物を削減する取組みを推進してまいります。

サーキュラーデザインビルド

【つくる】廃棄物を生み出さないようにつくる

  1. 解体・分解・再利用することを前提とした設計・施工
  2. リユース・リサイクル可能な建材の選定
  3. 建材を生かす解体プロセス・技術の開発

【つかう】建築・建材を使い続ける

  1. 既存建築の新たな価値・活用方法の創出
  2. 長寿命化建材の開発
  3. リユース・リサイクル・アップサイクルできる素材の開発

【つなぐ】まち・山の資源を循環させ、次世代につなぐ

  1. まちの中での建材循環システムの構築
  2. 森林グランドサイクルを加速させる、山の商流の整備

Ⅲ.【つくる】廃棄物を生み出さないようにつくる

1.廃棄物を生み出さないようにつくる:建設資材の99%を再利用・再資源化

建設後半年で解体される仮設建物「国際メディアセンター※」に対して、建物解体後に発生する建材を徹底的にリユース、リサイクルできるように設計施工しました。その結果、使用した建材の99%をリユース・リサイクルしました。

建材の99%をリユース・リサイクル
廃棄物を生み出さないようにつくる:建設資材の99%を再利用・再資源化

2.廃棄物を生み出さないようにつくる:廃棄物=0(ゼロ・エミッション)

当社東関東支店のZEB化改修工事にて、発生する廃棄物を少しでも減らすため、改修予定部分で解体せずに使える部分が無いか見直しました。これにより、既存のダクトや冷媒配管、タイルカーペット、外部フィン等を再利用(リユース)しました。また廃棄物となるガラス等の撤去材はリスト化してリサイクル処理を検討し、全てリサイクルしました。さらに、ZEB化に伴う蓄電システムには、電気自動車EVのバッテリーを再利用しています。
この他にも、建設時のCO2排出量をゼロに、運用時のCO2排出量をゼロにし、エミッションを徹底的にゼロにしました。

廃棄物=0への取り組み
廃棄物=0への取り組み

3.廃棄物を生み出さないようにつくる:リサイクル率の推移

当社の作業所では、工事で発生した廃材を可能な限りリサイクルできるように、各地の中間処理会社と連携して、細かな分別に取り組んでいます。
その結果、工事の増加に伴い廃材が多く発生しても、リサイクル率は常に90%以上を保っています。

総排出量(t)とリサイクル率(%)の推移
総排出量(t)とリサイクル率(%)の推移

Ⅳ.【つかう】建築・建材を使い続ける

1.建材を使い続ける:古い建材を新たに使う

歴史的建築物などの文化的に価値のある建物では、既存のタイルを廃棄せずに再利用することが、歴史的なデザイン価値を継承するうえで大きな意味を持ちます。建替えや改修時にタイルをそのまま廃棄するのではなく、古く、味わいのある建物として再びよみがえらせる技術「モルトールⓇ」を開発しました。この技術を活用することにより雰囲気を変えることなくリニューアルしてお客さまの想いのある建物を長く使って頂くことを実現しています。

タイル再利用技術「モルトール®」
タイル再利用技術「モルトール®」

2.建材を使い続ける:廃プラスチックのリサイクル

世界的な廃プラスチックの問題を受けて、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が2022年に施行されました。当社では作業所から排出される廃プラスチックの組成や処理状況を調査・把握し、リサイクル処理するための作業所での分別方法を検討しています。

リサイクルのための作業所分別の試行
リサイクルのための作業所分別の試行

3.建材を使い続ける:建材の水平リサイクル(ガラス)

建築は多くの材料で成り立っています。その材料をできるだけリサイクルをする取組みをしています。解体現場からガラスを取り出し、新しいガラスを生み出す実証をガラスメーカーと協業しながら進めています。

ガラスの水平リサイクル
ガラスの水平リサイクル

4.建築を使い続ける:BELCA賞

公益社団法人 ロングライフビル推進協会(BELCA) が主催するBELCA賞は、長期にわたる適切な維持保全と、優れた改修を実施した既存の建築物を対象とし、建物のロングライフ化への寄与に対する表彰制度です。ロングライフ部門とベストリフォーム部門の2部門からなり、賞の選考は、学識経験者と実務に精通した委員から構成される「BELCA賞選考委員会」により現地審査・選考が行われ、表彰建築物が決定されます。1991年の第1回開催以来、当社が関与してきた建物の品質、お客様と一体となった維持管理が高く評価され、受賞数累計、設計施工受賞数累計とも総合建設業としてトップの評価実績を頂いています。

建築を使い続ける:BELCA賞
受賞実績
日本武道館
日本武道館
改修設計 : 山田守建築事務所、総合設備コンサルタント
改修施工 : 竹中工務店 他

創建当初の意匠を守りながら安全性、快適性、バリアフリー性、省エネ性を向上させる改修を行い、建物の価値を向上させました。

立誠ガーデンヒューリック京都
立誠ガーデンヒューリック京都
改修設計 : 竹中工務店
改修施工 : 竹中工務店JV

小学校を改修したホテル・ホール・商業施設・図書館・自治会館からなる複合施設です。快適性・安全性を向上させながら、学校建築の特徴を活かしたコンバージョンを行いました。

5.建築を使い続ける:歴史的な建築物の活用

当社は、歴史的に価値のある建築物に対し、これまでの設計・施工のビジネスモデルだけではなく、自ら事業者として活用を進めております。都市部・地方のそれぞれの地域に対しまちの文脈を読み取り事業を形にしています。

旧山口萬吉邸(kudan house)

旧山口萬吉邸(kudan house)

1927年に建てられたスパニッシュ様式の邸宅をマスターリースし、既存建築の魅力を活かして、会員制のビジネスイノベーション拠点に用途転換した保存活用プロジェクトです。2018年に国の有形文化財に登録されました。

堀ビル(goodoffice 新橋)

堀ビル(goodoffice 新橋)
既存タイルを保存活用した外観

1932年創建の登録有形文化財を当社がマスターリースし、既存の装飾を残しながら耐震補強等を行い、シェアオフィスに改修しました。
事業・デザイン・技術で建物の魅力を活かす再生事例です。

BYAKU Narai

外観
外観
内部客室
内部客室

塩尻市奈良井宿にある築200年のかつての造り酒屋を、宿・レストラン・温浴施設、地域文化発信のためのギャラリー、酒蔵を併設する小規模複合施設へ再生しました。地産の木材や地域に受け継がれてきた漆などの工芸を各所に使用し、外観や構造体の保存規制の中で耐震性能や温熱環境、防災、遮音機能の向上を図りました。
2020年に当社は塩尻市と持続可能な社会づくりや地域課題の解決に寄与・貢献することを目的とした、連携協定を締結しています。

Ⅴ.【つなぐ】まちの資源の循環

1.まちの資源循環:森林グランドサイクル®

当社は「森林グランドサイクル®」と掲げ、中高層木造の技術開発と実践を進めてきました。この取組みは木造建築を都市部に増やすことだけでばなく、木材を活用することで山林と都市の新しい経済循環を生み出し、社会課題となっている地方の山林の維持管理の問題を解決することを目指しています。
2022年には農林水産省と「建築物木材利用促進協定」を締結し、中高層木造建築物等での国産木材の利用を促進しています。

まちの資源循環:森林グランドサイクル

2.まちの資源の循環:メタファーム

食品工場や飲食店などから多く排出される食物残渣をメタン発酵によりエネルギーに変える技術を開発しています。生ごみを外部搬出することなく建物内で分解し、発生したメタンガスを使うことで、エネルギーを地産地消する循環経済を実現しています。

メタファーム®の仕組み
メタファーム®