富岡製糸場「西置繭所(国宝)」保存修理工事に伴う素屋根工事の実施

2015年9月11日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:宮下正裕)タルヤ建設(社長:山田浩)JVは、2014年世界遺産に登録された富岡製糸場「西置繭所(にしおきまゆじょ)」保存修理工事に伴い、建物をカバーする素屋根工事を実施しています。今後の保存修理工事において、屋根の瓦や建具を取りはずす作業が発生しますが、その際に雨や風で建物が傷まないよう、西置繭所全体を覆う工事です。また、素屋根下に位置する史跡や国宝建物への影響を最小限にとどめるため、軽量な材料を選定し、当社開発のトラベリング工法®を採用しています。
9月中には、トラベリングによる素屋根のスライド作業が終了し、10月末には、全長120mの外屋根に「西置繭所」が全て覆われることになります。

作業状況

作業状況

素屋根概要
素屋根の骨組みは、鉄骨使用量の少ないトラス形状のユニット材(システムトラス)を採用し、素屋根全体の軽量化を図りました。保存修理工事の作業性向上のため、折板屋根には樹脂製の明り取りを、軒先・2階及び1階床レベルには合板製の作業床を設けます。また、素屋根外周には、西置繭所の外観写真を転写した防炎メッシュシートで覆い、工事中も歴史的な景観を保持します。

素屋根断面図

素屋根断面図

構造 軽量システムトラス造
規模 全長118.8m、巾21.5m、
高さ18.6m
建築面積 2,800m2
床面積 1,500m2
工事数量 システムトラス部材:300t
折板屋根:3,500m2
樋(軒樋+縦樋):400m
外周枠組足場:3,600m2
ホイストクレーン(1.0t):4基
トラベリング
回数
20回
総トラベリング
距離
215m

トラベリング工法®
今回の素屋根工事では、通常、建物の建設時に活用するトラベリング工法を採用し、工事中の部材落下による建物損傷リスクを低減しています。トラベリング工法は構造物の周囲に敷地の余裕がなく、クレーン作業に制約がある場合などに最適な工法の一つです。大架構をいくつかのブロックに分割し、クレーン操作が可能な場所で1ブロックずつ組立て、これを順次横移動させながら建物を構築していきます。当社では、トラベリング工法は、省力化、工期短縮に効果があるだけでなく、施工精度の向上にも役立つ工法として、使用中の路線や工場をまたぐ人口地盤、空港ターミナルの建設、体育館、重要文化財の寺社における素屋根工事等数多くの実績を築いています。

「西置繭所」について
冨岡製糸場には、東西に同規模同形式の繭倉庫があり、繭を貯蔵する倉庫として使用されていました。当初、2階は繭の貯蔵庫として、1階は南半分を選繭所や繭取扱所、北半分は蒸気エンジンを動かすための石炭置場として使用されていました。

工事概要

工事名称 平成26・27・28年度 重要文化財旧富岡製糸場西置繭所保存修理
(仮設・解体)工事
建築地 群馬県富岡市富岡1番地
発注者 富岡市長 岩井賢太郎
設計監理 公益財団法人 文化財建造物保存技術協会
施工 竹中工務店 タルヤ建設JV
工期 21か月 平成27(2015)年1月21日~平成28(2016)年9月30日
対象建物 重要文化財(建造物) 旧富岡製糸場 西置繭所
平成18(2006)年7月 :重要文化財指定
平成26(2014)年6月 :世界遺産登録
平成26(2014)年12月 :繰糸所、東置繭所、西置繭所が国宝指定
工事内容 素屋根工事 ・ 解体調査工事
  • 屋根瓦、雨樋、木製建具、ベランダ、煉瓦外壁や内装の一部

西置繭所建物概要

構造形式 木骨煉瓦造、 2階建、 東面・南面べランダ付、 桟瓦葺
建築面積 1486.60m2(全長104.4m、巾12.3m、高さ14.5m)
竣工年月 明治5(1872)年…築143年

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