新たなワークスタイルを促す空間デザインの効果を検証
2016年8月2日
株式会社竹中工務店
竹中工務店(社長:宮下正裕)は、新しいワークスタイル・ライフスタイルのきっかけとなる「ソトコミ®※1」を開発し、省エネだけでなく知的生産性等の効果を実オフィスにおいて実証しました※2※3のでお知らせいたします。
これまでのオフィスは省エネルギー対策としてハード技術が導入されてきましたが、近年はワーカーの環境選択行動を促すようなソフト面からの対策が注目されています。また、ワーカーが知的生産性を発揮できる環境に対しても関心が集まるようになりました。当社はワークスタイルに着目し、環境負荷の低いワークスペースを選択して働くという行動を組み合わせることで、省エネとともに知的生産性を高めることが可能な新しいオフィスの価値観を提案していきます。
- ①省エネルギーで運用される分散型コミュニティスペース
- ②ワーカーの移動を促す誘導システム
- ③パーソナル環境制御システム
以上の3つの技術をトータルとしてデザイン・構築し、オフィスワーカー一人ひとりの行動レベルで、自然環境の心地よさを感じながら、省エネかつ知的生産性が高まるワークスタイルを既存オフィスビルにおいて適用しました。その結果、①分散型コミュニティスペースの構築により、利用者の約7割がビルのイメージや満足度が向上・やや向上したと回答し、オフィスビルの価値向上に寄与する可能性があることがわかりました。また、②誘導システムでの快適性、空席状況、にぎわいといった情報提供は、利用者の約7割が利用を促す効果がある・ややあると回答しました。このように、人と自然環境、人と建物、人と人等を“つなげる”空間・情報システムがもたらす効果が明らかになりました。さらに、③パーソナル環境制御システム(照明・空調)に加えて、自席から分散型コミュニティスペースに移動した際のエネルギー削減効果を算出※4すると、45.3%の削減となることが分かりました。省エネルギーの設備機器がオフィスビルの標準になる中では、ワークスタイルによるエネルギー削減の重要性がさらに高まります※5。
分散型コミュニティスペース構築の効果
誘導システムによる情報提供が利用を促す効果
照明・空調のエネルギー削減の達成度※6
知的生産性に関する被験者実験では、個人とグループそれぞれで生産力テスト※7を実施した結果を検証し、個人・グループの両方で会議室よりも屋外コミュニティスペースでの成績が高くなる傾向を確認しました。また、分散型コミュニティスペースを利用するワーカーへのアンケート調査でも、50%以上が両分散型コミュニティスペースがあることによる生産性の向上を実感していることが確認できました。
知的生産性被験者実験のタスクの成績※8
オフィスワーカーの生産性アンケート結果
このように、これまであまり活用されていなかった空間や環境の情報を発信し、積極的な利用を促すことで、建物の価値の向上、省エネ、知的生産性の向上といった効果が期待できることが明らかになりました。さらに、オフィスだけではなく様々な建種において、この環境選択行動を促すしくみが広がっています。
(1)大手センタービル(ソトコミ®指数AE版)
2014年12月から、大手センタービルのホームページ上で大手町の「ソト」の快適度や環境情報を表示しています。
(2)立命館大学大阪いばらきキャンパス(ソトコミ®学校版)
2015年4月に新設された学生数6000名を越えるキャンパスに、学生・教職員の環境に対する主体的な活動「エコ・アクション」を誘発するシステムのひとつとして導入され、非空調の共用部や外部空間の積極的な活用を促しています。
(3)パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン(ソトコネクト®※9)
2017年度に完成するタワーマンションにおいて、住戸内のインターホンに複数の外部環境指数を表示するシステムにより、居住者の窓を開ける行為や外出などの省エネルギー行動を促します。
(4)OBP活性化プロジェクト(ソトコミ®イベント版)
2015年10月の4日間、この期間限定で設置された屋外滞在スペースの積極的な活用を促すために、現地、ホームページ、Twitterにおいて情報発信を行ないその効果を分析しました。
ソトコミ®のひろがり
このような環境選択行動の効果は、建物の価値の向上や省エネのみならず、利用者一人ひとりの快適性(ストレス)に対しても効果があると考えています。当社では健康的なまちづくり・空間づくりに取り組んでおり、今後は「健築®※10」においても「ソトコミ®」を活用し、その効果を検証していきます。
- ※1ソトコミ®は竹中工務店の登録商標です。
ソトワーク指数®の装置・システム・算出ロジックは特許登録済です。
竹中工務店プレスリリース 「屋外スペースの有効活用を促す新システムを開発」
https://www.takenaka.co.jp/news/2013/10/04/index.html - ※2この事業は、環境省「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(委託事業及び補助事業)(平成25~27年度)」に採択されました。
- ※3竹中工務店プレスリリース
「省エネと知的生産性を両立する新たなワークスタイルの実証実験開始について」
https://www.takenaka.co.jp/news/2014/11/04/index.html - ※4自席滞在者1人あたりの季節・時間を考慮したエネルギー利用量に分散型コミュニティスペースに滞在するオフィスワーカーの平均利用者数を乗じて算出しています。
- ※5エネルギー消費量100%削減の内訳
https://www.takenaka.co.jp/solution_manage/needs/environment/service04/index.html - ※6端数処理のため合計が合わないことがあります。
- ※7新しいアイデアを創出させ、その質を定量評価することが可能な、当社が開発したタスクを用いました。それを各個人で取り組ませて提出させたあと、それぞれのアイデアを持ち寄ってグループでブラッシュアップさせるという2段階で実施しました。
- ※8タスクの評価は、「新奇性」「適切性」をそれぞれ0~4の5段階で採点し、その和を得点とし16名の採点結果を平均して算出しました。
- ※9ソトコネクト®は竹中工務店の登録商標です。
ソトコネクト®の装置・システム・算出ロジックは特許出願済です。 - ※10健築®は竹中工務店の登録商標です。
「健築(Healthy Community Development)」
https://www.takenaka.co.jp/solution_manage/needs/healthycommunity/index.html