地震時における免震建物の動きを計測するための直立型変位計を開発し、適用~1台で水平2方向の計測に対応、変位のデータなどをデジタル画面で確認可能~

2020年9月1日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、地震時における免震建物の動きを計測する直立型変位計(特許出願済)を開発し、深江竹友寮(2019年9月竣工 当社新社員教育寮)、横浜市役所新庁舎(2020年5月竣工)に適用しました。本変位計の販売は、株式会社東京測振(東京都足立区)が行っています。

本変位計は、建物の免震層に設置することで、ロッド(計測棒)が免震層の動きに合わせて傾きながら動きます。この傾きを測り、1台のみで免震建物の水平2方向の大きな変位を計測可能としました。また、直立型のため、設置に必要なスペースを最小限に抑えられます。さらに、表示システムを設けることで、建物内居室の管理用PCから計測データの確認や免震部材の健全性判断が可能になり、地震が発生するたびに免震層へ入って確認作業を行う必要がなくなります。

直立型変位計による計測イメージ
直立型変位計による計測イメージ

従来、地震時における免震建物の大きな変位の記録を残すためには、ケガキ計※1が多く使用されています。ケガキ板に残される軌跡の目視確認やケガキ板の交換のために技術者が免震層内の設置場所へ入る必要がありますが、地震直後は建物の安全確認や余震の可能性からただちに入ることが難しく、地震発生から数日待たなければならないこともありました。一方、変位をデータとして計測可能な計測機として、水平型変位計があります。変位をデータ化できるため、遠隔でも計測できるほか、変位と共に免震部材の維持管理で重要となる速度や過去の履歴なども詳細にわかります。しかし、水平型変位計は1台で1方向を計測するものであり、水平2方向に動く免震建物の変位を計測するには最低2台導入する必要がありました。また、設置にはガイド材などの付属装置も必要であり十分な設置スペースを確保しなければならない、などの課題があり適用件数は多くありません。

ケガキ計と水平型変位計
  • ※1地震後にケガキ板にけがかれた軌跡を目視確認することで、どの方向へ最大どの程度動いたかを知ることができる。前回までの軌跡が次の地震時の軌跡と重なってしまうため、ケガキ板は交換する必要がある。

本変位計の特長

  • 直立型とすることで、従来の水平型変位計と比較して設置場所の省スペース化を実現。
  • 水平2方向の計測を可能にしたことで、従来の水平型変位計と比較して設置コストを50%程度に削減。
  • 本変位計のデータを使った表示システムにより、建物内居室の管理用PCからリアルタイムで計測データを確認可能。地震が発生するたびに免震層へ入って確認作業を行う必要がなくなるため、技術者の安全を確保したうえで、地震直後の建物安全性などの迅速な確認が可能。
デジタル画面上の表示システムの例
デジタル画面上の表示システムの例

本変位計の技術概要

2つのロッド(ロッドとガイドロッド)が自在継手(ユニバーサルジョイント)を介して繋がっています。免震層が動くとロッドは傾き、ガイドロッドは上に持ち上がります。このときの自在継手の回転軸の回転量を測定し、幾何学的に水平2方向の変位を計測します。回転量の測定には高精度デジタル式回転計を使用し、高い計測精度を実現しています。

本変位計の技術概要

開発における背景・課題

免震建物の優れた耐震性能を維持するためには、建物の免震層内に配置された免震部材の維持管理が不可欠です。昨今懸念されている南海トラフ地震などが発生した場合、免震部材は水平2方向へ±500mmを超えて大きく動く可能性があるため、維持管理の点から免震部材の変位を継続的にモニタリングすることが望まれます。また、防災拠点となる病院や庁舎などでは、地震直後に建物の安全性を迅速に確認して次の地震に対して早急に備えることも必要なため、リアルタイムで免震部材や免震建物の変位を把握したいというニーズが高まっています。
免震建物の変位のモニタリングを行うためには、計測レンジの長い変位計が必要となります。しかし、免震建物に設置できる従来の計測レンジの長い水平型変位計には、広い設置スペース、大きなノイズの発生、高コストなどの問題があり、免震建物の変位のモニタリングはほとんど行われていませんでした。そこで、このたび独自の計測機構を考案し、多くの免震建物への普及を目指した直立型変位計を開発しました。

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当社の免震建物の実績は業界トップクラスです。新築建物はもとより、建物を使いながら免震化することも可能です。


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