高度な解析による臨場感のある音響と建物の内部空間を同時に疑似体験できる可搬型音場シミュレータを開発

2022年12月2日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木 正人)は、建物の設計段階で、臨場感のある音響と内観の仕上がりイメージを同時に疑似体験できるバーチャルリアリティ(VR)を用いた可搬型音場※1シミュレータを開発しました。
当社はこれまで、高品位な音響が必要とされる劇場やホールの設計において、音響面では設計段階から完成後のホールの響きを疑似体験できる自社開発の室内音場シミュレータ「STRADIA®※2」を活用してきました。また、完成後の建物の内部空間を疑似体験できるVRシステムを活用し、VR映像によりお客様と建物完成後のイメージを共有してきました。
今回開発した可搬型音場シミュレータは、STRADIAによる音の再生とVR映像を同期させることで、あたかもその場にいるような臨場感のある音響と内部空間の仕上がりイメージを同時に疑似体験することが可能なシステムです。本システムは2つの機能をもっています。
1つ目は、従来のSTRADIAの機能に加え、人の頭の動きや向きを常に追跡することで、より高い臨場感を得られる機能「高臨場感可聴化システム」です。高品位な音環境が求められる劇場やホールに適しています。
2つ目は、VR空間内を自由に動き回り、それぞれの場所での音を聞き比べられる新開発の機能「動的可聴化システム」(特許出願済)です。劇場やホールほど高品位な音響を必要としないオフィスや店舗における人の動きや会話の音の聞こえ方を再現できます。
いずれのシステムも、ヘッドホンとディスプレイとノートパソコンをつなぐだけの簡易な構成であることから、持ち運びが可能でどこでも容易に体験することができます。

  • ※1音場:音が存在する空間・場所
  • ※2STRADIAⓇ (1985~) :設計図面より音の伝わり方を解析して得られた響きを、無響室で録音した響きの無い音楽に加えることで、完成後のホールの音響を再現する。
高臨場感可聴化システムと動的可聴化システム

当社は今後、本シミュレータを活用することにより、劇場やホールをはじめとする様々な建物の設計段階において、お客様の持つ印象やイメージを共有し、その要望や意向をより的確に把握することでお客様のイメージに沿った音の環境を構築していきます。

システムの概要

機能1:高臨場感可聴化システム
従来のSTRADIAが様々な方向から人に届く音を多数のスピーカにより再現しているのに対し、本システムは、各スピーカから耳の入口までの音の伝わり方を解析し、音を合成することで、ヘッドホンでの試聴を可能にしています。
ヘッドホンに搭載した動作検出センサ※3により頭の動きや向きを追跡することで、音をVR映像に同期させます。

  • ※3動作検出センサ:加速度センサ、ジャイロスコープ、地磁気センサを組み合わせた9軸のセンサ。
高臨場感可聴化システムの仕組み
高臨場感可聴化システムの仕組み

機能2:動的可聴化システム
VR映像の移動にともない音の聞こえ方が変化します。移動や発音のタイミングに遅れることなく音の解析を行うことで、ロビー~廊下~オープンルーム~食堂,あるいは,フロント~客室~ラウンジなど、建物内の移動にともなうシーンの変化を音と内部空間で同時に体感することが可能です。「静か/騒がしい」「響く/響かない」などの音環境の特徴を把握できることから、各所の内装仕上げやレイアウトの検討などにも適しています。

移動にともない音の聞こえ方が変化する

移動にともない音の聞こえ方が変化する

音を発すると響きを持って返ってくる

音を発すると響きを持って返ってくる