国の重要文化財、木造モダニズム建築「聴竹居」地震、台風被害後の整備が完了し、一般見学エリアを全館に拡大し公開

2023年8月30日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、当社が保有する国の重要文化財で、木造モダニズム建築「聴竹居」(ちょうちくきょ) の一般見学エリアを、9月3日から全館に拡大し公開します。

「聴竹居」は、2018年に大阪北部地震と台風21号によって甚大な被害に見舞われたため、文化庁・京都府・大山崎町のご指導と国庫補助を受けながら、当社は事業主として、災害復旧、保存修理、防災施設整備、さらに外構庭園整備事業を進めてきました。このたび一連の保存修理等整備事業が完了し、ほぼ竣工当時の姿によみがえらせることができました。

「聴竹居」の一般公開は、これまで「本屋(ほんや)」だけでしたが、施設整備の完了に伴い、「閑室(かんしつ)」も公開することとしました。併せて「茶室(ちゃしつ、下閑室)」も特別公開することになり、3つの建物と庭園の全館公開を行うことになります。
尚、2023年は「聴竹居」竣工95周年、「聴竹居」を建てた建築家・藤井厚二生誕135年にあたります。

「聴竹居」について

聴竹居(本屋)
聴竹居(本屋)

「聴竹居」は竹中工務店に在籍していた藤井厚二の第5回目の自邸として1928(昭和3)年に竣工した名作住宅です。和洋の生活様式の統合とともに、日本の気候風土との調和を目指した昭和初期の「日本の住宅」として、先駆性、歴史的・文化的価値が高く評価されています。

1999年にはDOCOMOMO JAPANの日本を代表する最初の「モダニズム建築20選」に選定、2017年7月には国の重要文化財に指定されています。
当社は2016年12月に「聴竹居」を取得し、地元住民と連携・協力を図りながら、適切な維持・管理のもと、見学会やイベントの開催を通して建築文化の発信に努めてきました。

国の重要文化財建造物としての保存修理等整備の概要

本屋

本屋外観
本屋内観

閑室とともに2018年の大阪北部地震と台風21号でずれ落ちた屋根瓦と崩れた外壁の災害復旧、耐震診断・補強を含む内装仕上げおよび家具の全面保存修理を行いました。

閑室

閑室外観
閑室内観

本屋同様に、内外壁の聚楽塗装の修理、内壁の奉書紙張り替えを行ったほか、壁の下地材に構造用合板を設け、仕切り壁を耐震壁としました。

茶室(下閑室)

茶室(下閑室)外観
茶室(下閑室)内観
茶室(下閑室)内観

素屋根を架けて全解体し、杭とコンクリート基礎の新設、耐震診断・補強を伴う全面的な保存修理を行いました。

外構

外構
外構

巨木化した欅の根の影響により、大きく変形・破損していた石段について、石をすべて取り外し、鉄筋コンクリートの基礎を新たに構築した後、同じ位置に戻して復旧しました。そのほか、木々に埋もれていた滝、池、小川の石組みと水盤を調査し、復原するとともに敷地全体の外構庭園整備を行いました。

一般公開について

コロナ禍において、施設整備上の都合からも一般公開を日曜日に限定していましたが、新たに水曜日も公開します。さらに、これまでは「本屋」のみとしていたところに「閑室」も加えます(一般公開入館料:大人1500円、学生・児童1000円)。
併せて「茶室(下閑室)」も別料金で特別公開(月に1回、土曜日)します。
聴竹居の見学等をご希望される方は、「一般社団法人聴竹居倶楽部」のホームページからお申込みください。聴竹居倶楽部の地元を中心としたスタッフが対応します。

  • 藤井厚二(ふじい こうじ、1888~1938年)は、竹中工務店初の東京帝国大学卒の建築家として1913年に入社し、在籍した1919年までの6年間に「朝日新聞大阪本社(1916年)」、「村山龍平邸和館(1917年)」、「橋本汽船ビル(1917年)」などの設計を担当。設計部(1926年に職制として制定)の礎を築く。竹中工務店退社後、9か月間の海外視察を終え、1920年に創設された京都帝国大学建築学科で教鞭(きょうべん)を執りながら自邸を次々と建て、その完成形としたのが「聴竹居」。真に日本の気候風土に適合した住宅の在り方を環境工学の点から科学的に考察した「日本の住宅(1928年)」を著す。

物件概要

所在地 京都府乙訓郡大山崎町大山崎谷田31
構造規模 木造平屋建
延床面積 本屋 / 173m2  閑室/ 44m2  下閑室/ 33m2
竣工 本屋・閑室:1928年、茶室(下閑室):1931年