「自立式超低温倉庫システム」を開発~バイオ医薬品の市場拡大でニーズが増す超低温域での製品保管に貢献~

2020年11月25日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)は、-40℃以下の超低温域での保管を目的とした「自立式超低温倉庫システム」を開発しました。これは、世界的に市場ニーズが高まっている、バイオテクノロジーを応用して製造されるバイオ医薬品を対象としたものです。
従来方式の超低温倉庫は、倉庫外周での温度差による結露や結氷の発生を防ぐために、構造体や支持材をウレタン等の断熱材で被覆する必要があります。しかし、被覆作業にはコストと時間がかかる、被覆が必要な範囲を完全に特定することが難しい、倉庫全体の工事との調整が難しいなどの課題がありました。
今回、倉庫を囲むパネルをすべて自立する断熱性能を有したものとすることで、これらの課題を解決し、ニーズの高まる超低温倉庫を短工期で建設することが可能となりました。

  • 本商品は、日軽パネルシステム株式会社(パネルシステム)、日立グローバルライフソリューションズ株式会社(冷却設備)の協力を得て開発しました。

「自立式超低温倉庫システム」の概要

倉庫は6面全てが断熱性能を有した鋼板サンドイッチパネル(以下、断熱パネル)で構成されています。構造体床部と倉庫床にある断熱パネルの間には断熱性能を有する緩衝材を敷き、更に空気道も確保し、冷凍倉庫特有のヒートブリッジ*1防止策を講じています。
更に外周のパネルを自立させて独立した倉庫にすることで、ヒートブリッジの原因の一つとなる建屋構造体からの支持材を無くし、外周での結露・結氷の発生を防止します。
また、建屋から独立することで、本体からの支持工事対応が不要となるほか、本体建屋工事に大きく左右されず、フレキシブルな施工計画が可能となり、メンテナンスを含む運用段階でも安心・安全にお使いできるシステムとしています。

  • 1:ヒートブリッジとは建物の躯体等を通じて熱が伝わっていく現象で、断熱処理を十分に行わないと結露の原因になると言われています。

「自立式超低温倉庫システム」の特長

① 自立による断熱性能の確保
  1. 6面全てを自立した断熱パネルで構成され、構造体床部と倉庫床パネル部の間には断熱性能を有する緩衝材を敷き、更に空気道の確保によるヒートブリッジ防止策を講じています。これらの構造形成により、ヒートブリッジに起因する構造体からの支持材を皆無としています。
➁ 耐震性能の確保
  1. 断熱パネルの部材特性を実験により把握し、実大試験体を用いた加力実証実験によって接合部の強度や変形性能、気密性能を検証すると共に、構造解析モデルを作成して耐震性能を確認しています。
  2. さらに、地震時の過大な変形を抑制するため、冷凍倉庫側壁と倉庫建屋の間には振動制御ダンパーを設置しています。
③ GMP・GDPに適合した庫内環境の構築
  1. 倉庫内はGMP*2・GDP*3管理に適合するための温度マッピングに基づく温度コントロール・モニタリングシステムを設置します。また、温度管理に必要なバックアップ機能を有しています。
  • 2:GMP(Good Manufacturing Practice)とは、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準。
  • 3:GDP(Good Distribution Practice)とは、医薬品が製造工場を出荷した後、患者さんの手元に届くまでの流通過程における品質確保を目的とした基準。
④ 稼働に必要な全ての設備をオールインワン
  1. 電気設備、冷却設備、温度モニタリングシステムなどの稼働に必要な設備をワンパッケージにして、計画・製作・据付・試運転・バリデーションまでを実施します。
⑤ 設置条件を大きく緩和
  1. 建屋内に超低温倉庫自体と収納品等に必要な重量に耐える設置スペースがあれば、新築・改修を問わずに設置することが可能です。
⑥ 短工期・ローコスト
  1. 従来の方式と比較して、施工期間を1週間以上短縮*4でき、同等以下のコストでの導入が見込めます。
  • 4:パネル総面積(床除く)400m2程度の場合