尾鷲ヒノキを活用した尾鷲市役所本庁舎の
耐震改修工事が完了~新開発部材「CLTエストンブロック」を初適用するなど、様々な耐震補強工法を採用~

2021年4月22日
株式会社竹中工務店

竹中工務店(社長:佐々木正人)の設計・施工(JV)による尾鷲市役所本庁舎の耐震改修工事が、このたび完了しました。「安心安全」「再生」「尾鷲らしさ」をコンセプトとして生まれかわった本庁舎における耐震改修工事には、地産地消の観点から地元尾鷲産のヒノキを積極的に活用することを目的に、新開発部材「CLT※1エストンブロック」(特許出願済)をはじめ、木を活用した様々な耐震改修工法を適用しています。さらに、庁舎機能を維持し、業務を継続しながらの工事を実現するために様々な種類の補強方法を採用しました。
今回の耐震改修により災害応急対策活動に必要な建物が満たすべき「官庁施設の総合耐震計画基準」に定める2類(Is値※20.75以上)に向上しました。

  • ※1CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板):木の繊維方向が直交するようにひき板を重ねて接着したパネル
  • ※2Is値:建物の強度・靭性、形状やバランス、経年劣化などといった耐震性能に大きくかかわる要素を総合的に判断する指標
耐震改修工事前の外観
耐震改修工事前の外観
耐震改修工事後の外観
耐震改修工事後の外観

尾鷲ヒノキの活用

市民利用エリアにおける尾鷲ヒノキの積極的な活用を考え、正面玄関の外回りには、鋼板とヒノキの集成材を組み合わせた「耐震市松®」※3、風除室には、ヒノキのCLTを蝶々形に削り出した新開発部材「CLTエストンブロック」を耐震壁に初適用しました。
建物内部には、無垢材の木圧着ブレース(特許出願済)「T-FoRest® Light」の採用をはじめ、市民ホールにおける天井木製ルーバー等、内装仕上げ材においても尾鷲ヒノキを採用し、木の香りや温もりに溢れる落ち着いた空間を創出しました。

  • ※3耐震市松 複数のせん断パネルを市松状に配置して、層間に生じるせん断力を伝達させることのできる当社開発の鋼板耐震壁
木板を組込んだ耐震市松
木板を組込んだ耐震市松
木圧着ブレース「T-FoRest Light」
木圧着ブレース「T-FoRest Light」
木の香りに溢れる市民ホール
木の香りに溢れる市民ホール

新開発部材「CLTエストンブロック」を用いた耐震壁について

CLTエストンブロック耐震壁は、2014年に竹中工務店が開発したコンクリート製の「エストンブロック」※4と同じ蝶々形をしたブロックを積み上げて構築する壁で、ブロックの素材を木にしたものです。エポキシ樹脂と呼ばれる接着剤でブロックを接着しながら積み上げます。
木質材はコンクリート製よりもさらに加工自由度が高く、3次元加工により立体的で陰影のある表現を実現しました。また、CLTエストンブロック1つの重さは4kg程度と軽量で扱いやすく施工性に優れた工法といえます。使用する木材は地域材利用が可能です。
CLTエストンブロック耐震壁は竹中工務店と北海道総研・林産試験場、芝浦工業大学、北海学園大学との共同研究を通じて開発されたものです。

風除室のCLTエストンブロック耐震壁
風除室のCLTエストンブロック耐震壁
立体的な表現を活かしたデザイン
立体的な表現を活かしたデザイン
CLTエストンブロック(単体)
CLTエストンブロック(単体)
ブロックの組立(接着剤塗布)
ブロックの組立(接着剤塗布)

竹中工務店は、「森林資源と地域経済の持続可能な好循環」を目指す森林グランドサイクル®を推進しています。今後も、木のイノベーション・木のまちづくり・森の産業創出・持続可能な森づくりの4つの領域において、様々なステークホルダーと共に活動することで、まちと森がいかしあう関係が成立した地域社会「キノマチ」の実現につなげていきます。

「尾鷲市役所本庁舎耐震改修」工事概要

所在地 三重県尾鷲市中央町10番43号
建物概要 地下1階 地上3階/鉄筋コンクリート造
設計 竹中工務店
施工 竹中工務店・丸昇建設特定建設工事共同企業体(JV)
工期 2020年4月~2021年3月


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当社は、技術革新を通じて日本の木材利用を促し、低炭素社会の実現と、地方創生につながるまちづくりを進めています。



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