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グリーンインフラは、企業に
どのような価値をもたらすのか?

近年注目される「グリーンインフラ」という概念。気候変動はもちろん、そのほかの社会課題を同時解決するものとして期待されています。企業がその敷地にグリーンインフラを導入することには、どういうメリットがあるのでしょうか。

注目される「グリーンインフラ」

  • グリーンインフラ(Green Infrastructure)は、自然に備わる多面的な機能を活用した社会基盤や土地利用のことです。特に、平常時に多様な機能を発揮することが特長です。対するグレーインフラは、道路や防波堤、調整池などのコンクリート構造物のこと。一般的に、グレーインフラは単一の目的で高度な機能を発揮するように作られています。
  • 例えば、グレーインフラである「地下貯留槽」は、豪雨の際、雨水の地下浸透や下水道への流出を抑制するために存在します。一方、グリーンインフラである「レインガーデン」は、豪雨時の地下浸透・流出抑制のみならず、平常時にも、気候調整や景観形成、生物多様性保全など、さまざまな機能を発揮します。地下貯留槽の一部を担ったり、補強したりすることで、災害に強く、美しいまちづくりに貢献できるようになります。
  • これまでの社会は、グレーインフラを中心に整備することで、利便性と安全性を確保してきました。しかし昨今は、人口減少による土地利用の変化、SDGsの実現、気候変動で激甚化する災害…これらに対応するため、多目的かつ統合的な解決策が求められています。その一つとして、グリーンインフラへ注目が集まるようになりました。竹中工務店は、「人と自然が融合する2050年の社会」を実現するためにグリーンインフラ(GI)が不可欠と考え、研究開発を推進しています。

<TAKENAKAのGIがめざすまちの姿>
【環境】自然と共生し、環境負荷の少ないまち
【経済】都市の魅力が高く、人財を惹きつけるまち
【社会】誰もが暮らしやすく、社会参加できるまち
【防災・減災】災害につよく、安全・安心なまち
【健康】心身の健康と安寧が得られるまち

<企業×グリーンインフラのモデルケース>
・敷地内に、多様な生物が生息する緑地を作る
・植栽空間を活用して雨水を貯留・浸透させ、健全な水循環と生物多様性保全に貢献する
・ビル屋上などの未利用地で都市農業をする
・駐車場や歩道を芝生化し、地表面温度を下げる etc…

企業は、土地利用としてグリーンインフラを導入することで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。代表的な3つのメリットをご紹介します。

企業側のメリット[1]人財を惹きつける、人財を成長させる

  • 働く人の幸福感や創造性を高める職場環境には、良い人財が引き寄せられます。現代の働き手、特にこれから第一線で活躍していく世代は、自然を感じられるワークスペースを好む傾向があると言われています。給与や福利厚生だけでなく、職場環境への投資は、人財争奪戦を勝ち抜く要素になるのです。
  • さらに、人は自然保全活動に取り組むことで、社会課題を感知する感受性が高まると言われています。敷地内にグリーンインフラを導入することで、自然に関わるアクティビティに参加しやすくなります。社内外との交流が生まれれば、感受性だけでなく、創造性の向上も期待できるでしょう。

企業側のメリット[2]災害対策

  • 気候変動により頻発・激甚化する水害、土砂災害。国土交通省は、あらゆる関係者があらゆる敷地で治水を行う「流域治水」への転換が必要としています。ダムや堤防の整備に加えて、流域で暮らす人や企業、団体など、関係者全員で対策をしようという動きです。
  • 企業も、流域治水の重要なプレイヤーとして地域に貢献しなければなりません。オフィスや工場など、敷地ベースでの防災・減災対策が必要とされています。特に水害に対しては、前述のレインガーデン技術を活用したグリーンインフラが効果を発揮します。

<竹中の水害対策技術「レインスケープ®」>
豪雨時も平時も機能を発揮する雨水の貯留浸透施設です。
災害対策だけでなく、人を惹きつける景観づくりや生物多様性保全などにも貢献します。
≫詳しくはこちら

企業側のメリット[3]企業価値の向上

  • 今やどの企業も避けられないSDGsの取り組み。世界的なESG投資の潮流は、SDGsの取り組みをさらに後押ししています。環境問題をはじめとする社会課題の解決に取り組むことは、企業にとって「プラスα」ではなく、「不可欠」なものになりました。
  • 多機能で多目的なグリーンインフラは、企業が取り組む社会課題解決策として最適です。 企業の敷地を多機能な緑地にすることで、環境負荷の低減はもちろん、地域の災害対策、コミュニティの創出などに貢献できます。それが、企業価値の向上につながるのです。

自然と対峙するのではなく、自然の力を活かす

  • このようにグリーンインフラは、人材獲得、防災、企業価値向上など、さまざまなメリットが期待できる土地利用といえます。
    自然の力は強大で、ときに脅威にもなりうるものです。人間が無理やり押さえつけ、跳ね返そうとすると無理が生じます。自然と対峙するのではなく、自然を上手に活かしていくという考え方が、サステナブルな企業活動には必要です。

    竹中工務店は、自然の力を活かすという発想で、グリーンインフラ・ソリューションをはじめとする技術開発を加速させています。企業同士で知恵を出し合い、協力し合いながら、カーボンニュートラル実現に向けて踏み出していきましょう。

<研究開発フィールド「調の森」>
グリーンインフラ・生物多様性保全の研究開発フィールドとして、竹中技術研究所内に「調の森 SHI-RA-BE ®」を整備しています。ここでは、生態学や緑地計画学など、さまざまな専門領域の研究員が、グリーンインフラや生物多様性保全に関する研究開発を進めています。2021年10月、世界的な屋外環境の認証制度であるSITES(The Sustainable SITES Initiative)でゴールド認証を取得しました。認証取得で培ったノウハウを活かしてお客様の環境認証取得もサポートしています。ぜひご相談ください。
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  • <グリーンインフラ コンセプトブック>
    竹中のグリーンインフラについて、詳しくはこちらもご覧ください。

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竹中技術研究所研究トピックス