「一社だけでは実現できない」2050年に向けて、連携や協力を呼びかけていく
「一社だけでは実現できない」
2050年に向けて、連携や協力を呼びかけていく
―竹中工務店 CSR推進部インタビュー―
2021年、竹中工務店はCO2削減の長期目標を大きく改定し、2050年にCO2排出量を実質ゼロにすると宣言しました。カーボンニュートラルな社会の実現を目指して、取り組みを加速させています。
そこに至るまでにどのような葛藤があったのか。今後どのような活動が必要なのか。当社の環境への取り組みをリードする「CSR推進部」部長の林に話を聞きました。
PROFILE:林 健太郎
株式会社竹中工務店 CSR推進部長(2021年12月現在)
建築の設計者として入社以来、プロジェクトマネジメント、経営企画などを経験。
2021年3月に現職に就任して以降、環境やカーボンニュートラルについて、社内外へ積極的に啓発・推進している。
※部署名・役職・インタビュー内容は2021年12月現在のものです
お客様からの相談が急激に増えた2021年
「脱炭素の目標を策定中なのですが、こういう協力は可能ですか?」
「目標は定めたのですが、達成のために何をするべきか模索しています」
「竹中さんに発注している建物で、こういうことはできませんか」
「竹中さんの取り組みについて、詳しく聞かせてください」
「ウチも、環境への取り組みをしないといけないと思っているんですけどね…」
「2050年にCO2排出量実質ゼロにする」と宣言した2021年、その5月には「環境コンセプトブック」を全面改訂し、当社の取組みや考え方を発信しました。
以来、CSR推進部長である林の元には、営業担当者を通じてお客様から相談が多く寄せられるようになったそうです。
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林:「例えば、ディベロッパー様は、非常に高い目標を掲げていらっしゃいます。『プロジェクトのCO2排出量を正確に把握したいのですが可能ですか?』など、一つ一つのプロジェクトで、何ができるかを模索され、相談をいただきます。また、当社にビルや工場などを発注いただくメーカー様も、排出量をかなり意識されています。特にサプライチェーンへの働きかけは始まっているように思いますね。当社に対しても、建物の材料の製造過程で出るCO2や、建物の運用時に出るCO2についてのご要望をいただきます」
林は、個別のプロジェクトの相談だけでなく、セミナーなどのイベントでも、積極的にお客様へ情報提供を行っています。
林:「2021年に開催したイベントでは、ライブ中継も行いました。オンライン視聴も含め、総勢170名近くのお客様に聞いていただけまして。お客様の関心度の高さを改めて実感しました」
「CO2排出量実質ゼロ宣言」をするまでの葛藤と覚悟
- 林:「80%削減から100%削減になる、このギャップはとてつもなく…今までと違う次元での決断でした」
- 竹中工務店のCO2削減長期目標について、詳しくはこちら 林:「2021年に開催したイベントでは、ライブ中継も行いました。オンライン視聴も含め、総勢170名近くのお客様に聞いていただけまして。お客様の関心度の高さを改めて実感しました」
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竹中工務店は、これまで長期目標を「2050年に80%削減」と定めていました。しかし、急速に加速しつつある世界の動きを受け、「100%削減」と改定。目標を大幅に上げました。
林:「私たちは2020年から、中期計画に対する活動や成果の公表を始めていました。1年ごとに、できた/できなかったを発表していくものです。これも、従来の当社のやり方からは少し次元が変わったなと感じています。もちろんCO2削減目標に対しても、公表することにしました」
高い目標、そして公表。大きな方向転換に、社内では多くの議論が行われたと言います。
林:「どの企業もきっとそうなのですが、スコープ1~3のうち、特にスコープ3は大変です。ここは『自社のみで達成できない範囲』ですので。竹中工務店の場合、『建物運用時のCO2』が多く含まれます。それを私たちの責任でどうやったら下げられるのか、私たちでできる範囲は限られているのにどうするのか、などの意見や苦悩の声は多くありました。でも、それをやらないと、建設会社として認められなくなります」 -
「できるのだろうか、でもやらなければ企業として選ばれなくなる――」
どの企業でも、このような葛藤が起こっているのではないでしょうか。
林:「どこかのスコープ1はどこかのスコープ3で、どこかのスコープ3はどこかのスコープ2かもしれません。『この部分はどの企業のスコープか』ではなくて、スコープ3を誰もが意識し、連携しあわないと、社会全体でカーボンニュートラルは達成できないはずなんです。竹中工務店は『まちづくり総合エンジニアリング企業』として、『サステナブル社会の実現』を目指しています。それは、建物を建てるときのCO2だけでなく、建物のライフサイクル全てにおける排出量削減のために、専門家として関与し、責任を持って提案していくという決意でもあるんです」
※スコープ1:燃料の燃焼など、直接排出
スコープ2:電力・熱などの使用に伴う間接排出
スコープ3:設計した建物の運用時を含む、スコープ1、2以外の間接排出
従来のビジネス関係さえも超えて連携し、対話する
- 林:「企業や業界の枠組みを超えて、『どこでどう協力しあえるでしょうか』という会話が、これからも増えていくと思うんです。既にお客様のCSR担当の方から『協力したい』『協力について一緒に考えませんか』というご要望や相談もいただいています」
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林:「例えば、竹中工務店の課題の一つに『建設資材の製造時のCO2』があります。CO2排出が少ない鉄骨やコンクリートなどに置き換えていくのには、少し時間がかかるんですね。自社単独で研究開発するだけではなかなか難しいため、サプライヤーや競合他社と連携し、建設業界として活動を進めているところです。今までのサプライチェーンの中に新しい材料や技術を投入するとなると、どうしてもプラスのコストが発生します。そのコストはどうやったら吸収できるのか、みんなが動きやすいのはどれなのか、などを協力して考えていこうとしています」
林は、従来のビジネス関係―発注/受注―だけではない関係性もできてくると予想します。
林:「他社と競争して、自社の利益を追求し、右肩上がりの成長や存続をひたすら目指していくという世界は、少しずつ変わっていくと思います。形を変えて、交差して、融合していく――そういう企業も増えていくのではないでしょうか。社会が企業に求める価値は、どんどん変化します。そのときに持っている技術で求められる価値を提供していくことが一番大事で、それがうまくいっていれば、結果として企業の存続につながるのでしょう」
連携しながら地球の課題を解決していくこと、サステナブル社会に貢献すること、それが今の企業に求められる価値なのかもしれません。
林:「当社は以前から、『ステークホルダーとの対話』を大切にしていましたが、その重要性が一気に高まっています。双方向の対話を重ね、常に自分の活動を見つめ直しながらやっていかなければ信用されない、選ばれる企業になれないと、強く感じています」
2022年の取り組みについて、このように語りました。
林:「当社の従業員がそれぞれの持ち場で、実感できるようにしていきたいです。自分たちがこれをしたからこれだけ削減できたとわかるように、見える化できないかなと。CO2は目に見えないだけに、全従業員が同じように実感を持つのは難しいものです。この課題感は、他の企業さんでもお持ちではないでしょうか。こういうお話も、一緒にしていきたいですね」
林:「先駆けている自負はあれど、竹中工務店も模索しながら進めている状況です。ぜひお声がけください。セミナーや勉強会形式でのお話も歓迎ですし、CO2削減につながる提案も積極的にさせていただきます」 - >環境コンセプトブックはこちら詳しくはこちら
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