コラム

「アフター万博を見据えた技術開発」

竹中工務店 夢洲開発本部先端技術チームインタビュー

2023.11.29

竹中工務店では、2020年に夢洲開発本部内に先端技術チームを設置しました。2025年の大阪・関西万博はもとより、その後の2030年、2050年を見据えた技術開発を推進しています。2023年6月に万博関連工事も始まった中で、竹中工務店の取り組みや今後どのような活動をされていくのか、先端技術チームのチームリーダー、プロジェクトマネージャー、サブマネージャーの方々に話を聞きました。

PROFILE 先端技術チーム リーダー (株)竹中工務店 取締役執行役員副社長 田ノ畑 好幸 設備職能として入社し、神戸の作業所・大阪本店設計部設備設計部長・大阪本店設備部長・大阪本店次長を歴任。2015年に執行役員、2018年に常務執行役員、2021年専務執行役員を経て、2023年現職に就任。以降、設備・エンジニアリング統括担当として、社内外へ積極的にプレゼンス向上の活動を推進している。 先端技術チーム プロジェクトマネージャー (株)竹中工務店 役員補佐 小柳 真二 設備職能として、入社以来、京都支店、九州支店、大阪本店に所属し、2018年大阪本店設備部長、2021年大阪本店次長などを経て、2022年に現職に就任。以降、設備領域、地球環境推進、先端技術について社内外へ積極的に啓発・推進している。 先端技術チーム サブマネージャー (株)竹中工務店 スマートコミュニティ本部 副本部長 天雲 伸一 設備職能として入社以来、神戸支店・大阪本店作業所などに所属、2009年より設備部、2017年よりスマートコミュニティ推進室、2020年に現職に就任して以降、当社のスマートなまちづくり、先端技術について、社内外へ積極的に啓発・推進している。 *部署名・役職・インタビュー内容は2023年11月現在のものです。

グリーンフィールド夢洲にむけた想い

先端技術チームが設置された背景はどのようなものでしたか?
また、2025年大阪・関西万博には、基本理念やテーマが掲げられています。それらをどう解釈し、会社の事業として、どのような姿勢で取り組んでいますか?

夢洲開発本部 先端技術チーム 田ノ畑チームリーダー

田ノ畑:「グリーンフィールドの夢洲」で、当社が描いている「未来に向けた技術」を社会に披露し、プレゼンスを上げていこうという夢洲開発本部の先端技術チームの強い意思があった。2025年日本国際博覧会「大阪・関西万博」は工事期間も含めて絶好の機会・場所となると判断した。我々が培ってきた技術を実証・実装していく素晴らしいフィールドが夢洲に現れたということです。そこで我々は社内の先端技術を集め、この場で実証・実装できるものは実施していこうということでこのチームが結成された。ただし万博だけで終わるものではなく、その先を見据えている。そこが非常に大切で重要なことです。

夢洲開発本部 先端技術チーム 小柳プロジェクトマネージャー

小柳:未来社会での実装ですね。今回の万博は、「いのち輝く未来社会の実現のための実験場」と位置付けられているので、そこで当社が保有する技術や、社外パートナーといろいろコラボしてやっている技術を実験するフィールドとして、どんどん実装していこうと思っています。さらに、万博の実験や実装が終わりではなくて、そこをマイルストンに置き、2030年とか2050年の未来社会への実装のための技術開発の弾みにしたいと思い取り組んでいます。

夢洲開発本部 先端技術チームメンバー 天雲

天雲:「先端技術チームができた2020年のころは、ちょうど国がSociety5.0:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を、スマートシティを通じ具体化、具現化を言っていた時期であり、それをぜひ2025年万博という機会で皆に体験させたいということ、その先のビジネスに繋げたいという想いでやっています。実際には我々の社会は多様社会ですのでそれをデジタルツインでモデル化する、都市OSや空間情報プラットフォームだけでなくMaaSなどのアプリケーション、グリーン水素や帯水層蓄熱など再生可能エネルギーも対象とし、それを当社だけで実現するのは到底無理ですので、様々な分野の社外パートナーと協業して進めてきました。」

小柳:「私は3月からこのチームのプロジェクトマネージャーをさせてもらっています。すごく感じるのは、先端技術チームが社内横断の組織であるということと、社外パートナーとの連携でなりたっている点です。チームで取り扱っている先端技術は、自社だけの技術ではどれも成立しなくて、産・官・学とよく言いますけど、社外のパートナー企業、専門の先端技術を保有する企業との組み合わせで成り立っているということです。それとそれを押してくれる国交省とか、経産省とかの官のサポート、それから大阪商工会議所さんとも連携しながら進めています。だから社内の横の連携と、社外との関係をしっかり維持してやっていくことが、未来を描けることに繋がると思います」

田ノ畑:「私が思うに、当社は現在、建設事業をメインでやっているけれども、将来を見据えたときに本当にそれだけに頼っていて良いのかを考える重要な局面に差し掛かってきたのではないかと思う。今回この先端技術チームは、単にリアルな箱物だけを対象にしていません。「もの」から「こと」作りへのイノベーションをしつつ、「コモングラウンド」を代表する「ソフトのソリューション技術」も提供しようとしています。このような技術を活用して、お客様に付加価値を提供し、フィービジネスへと展開していければ、第二の柱となるビジネスモデルができるのではと予感がしています。まさにこの先端技術チーム活動は、新たなビジネスモデル実現に向けて取り組んでもらっているチームだと思っています。

アフター万博への取り組み

2025年の大阪・関西万博後を見据えて、先端技術チームは、どのような活動に力を注いでいきますか?

田ノ畑:「最初にお話した通り、万博で実証・実装することが最終章ではありません。万博は通過点であり、これから夢洲では様々なプロジェクト開発が行われ、スマートシティ化が進んでいきます。この万博をはじめ夢洲の各プロジェクトに向けて実施してきたたことは、日本の他の地域でも必ず使えると確信しています。そして、今、推進している先端技術が今後のまちづくりの課題解決に大いに貢献してくれると考えています。」

天雲:「おっしゃる通り、夢洲は都心部ですが海に囲まれていて、交通とか物流とか飲食物販など生活サービスに課題がある場所です。数千人を超える作業員や多くの資材が集まってくるグリーンフィールド夢洲の建設段階の課題をMaaSや陸空自動搬送など先端技術で解決しているうちに、他のまちに展開できる、地域の課題解決に展開できる当社の新たなソリューション力が養われると考えています。」

小柳:「うめきたと夢洲において“コモングラウンド”を実装するのは、国家戦略であるデジタル田園都市構想、大阪府市の掲げるスーパーシティという考えにマッチしていると思います。地方と都市で距離による文化や社会、経済の格差を小さくできる、すごい技術です。リアルタイムにフィジカル空間とサイバー空間をデジタルに重ね合わせて、その空間同士で双方向に連携できるんです。これは教育や医療、スポーツ、エンタメなどに生かすことができると思います。わざわざ都心に行かなくても地方で遠隔授業が受けられて学習単位が取れるとか、事情で学校に行きにくい人も授業に出やすくなりそうです。このデジタル化された空間情報は人だけでなくロボットやモビリティーなどにも展開できる技術になります。今後、社会課題をいろいろと解決できるようになるなと思います。これに当社の持つ空間データ分析技術(ビルコミ、BSAP)と統合するとさらに高度化できるので、今は社会のニーズがなくて使いものにならないかもしれないけど将来の事業や社会のために、今やっておかないといけないなと思い活動しています。」

田ノ畑:「建築を生業にしている我々には果たしてどこまで行けるのか出来るのか。目指す未来社会がそこにあるという、そこに向けた一つの解を求めて、僕たちは今活動している。未来社会の実験場である万博は我々としては非常に良いフィールドを与えられた感じだね」

天雲:「何としても万博でその未来社会の一端を、世の中にお見せしないといけない」

小柳:「未来の技術に本気で取り組んで、とにかく世界の人にこの技術を見ていただいて、そこで反応を見て、いいのか、あるいは変えないといけないのか、社会のニーズをくみ取って事業に繋げるようにしたいですね。」

天雲:「世界に対してアピールできる場は、なかなかないですからね」

小柳:「やっぱりそれが未来社会の実験場という万博のあるべき姿だなと思います」

一覧へ戻る