地震国日本の音楽専用ホールは音響効果を叶えながらも地震時に安全でなくてはなりません。
音楽専用ホールの天井は、複雑な形状で重量が有り、且つそれに設備機器が組み合わされます。また、大空間なので、地震時には建物全体として大きく変形しがちです。
当社はこれらの課題を解決するため、高度な性能の設定~構造解析~天井下地の仕様決定~確認試験までの一貫した設計プロセスを適用しました。
音響性能を確保するため、音楽専用ホールの天井には、下記事項への対応が必要です。
1.ハイレベルな遮音性と反射性(場所によっては吸音性)
2.反射音を分散させる複雑な形
3.音響機器やメンテナンス通路を支持する強度
4.天井を見上げた際の意匠性
これらを満たすために、例えばボードを5重に貼ることが必要になるなど、天井の重量が重くなったり、形状を反映して下地の構成も複雑になったりします。更に、建物自体の揺れの影響を受け、地震時に天井の揺れが大きくなることもあります。 このように耐震性に関して不利な条件が揃っているため、音楽ホールの天井の設計・施工には高度な技術が要求されます。当社は多くの専門性を統合したフローを構築し、適用しています。
設計フローは3つのステップからなります。ホールによっては、設計フローの全段階を踏む必要が無く、要所だけを選択することもできます。
建物の振動モデルを作成し、建物建設地で予測される設計用地震動による揺れを計算することで、以下の検討を行います。
1.天井を吊る階での揺れの大きさを算出
2.公共性の高い基準との整合を考慮しつつ、1の結果に基づき設計用震度Kを設定
天井の複雑な形状と重量を支えるために必要な下地骨組みの構造を3次元データにより検討します。次に各部材の形状・寸法を設計用震度Kに対する安全性を満たすように決定します。既製品が適合しない場合はオリジナルの部材を製作します。施工時に不都合が生じないことを予め検証しながら、部材の構成を決定します。
天井の構成が複雑な部分を再現した試験体を必要に応じて作成し、設計用地震動によって生じる揺れを加えることで、必要な強度が満たされていることを確認します。
1. |
新たに強固な鉄骨下地として作り変えるとともに、新しい防振金物を設置 |
2. |
強固な鉄骨下地に大地震にも耐える角パイプの取付け |
3. |
天井ふところの高さの基準を原則1.5メートル以下に設定 |
4. |
天井ふところ内には揺れを抑える筋かいを設置 |
5. |
天井を構成する全ての接続金物は、強度計算を行い、強度確認の上使用 |
6. |
天井の山・谷部分の接続部分を、プレートとパイプで補強 |
7. |
天井と周囲の壁などの間に原則100ミリメートル以上の隙間を確保 |
下地骨組みの組み立ての後、ボード5枚を重ね張りしていきます。
折れ曲がりの多い、複雑な形状なので、3次元測量で位置決めをし、仕上がりの精度を確保します。